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モルダバイトそして『モルダウ』

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モルダバイト(Moldavite) そして 『モルダウ』

モルダバイト

モルダバイトは強靱な意志を持った騎士(ナイト)のような印象を受ける。
自らが定めた主君を奉じ、定めであるなば死をも厭わぬ、強固な信念に貫かれた老練な武将。
ただその信念は、他から搾取するための方便ではなく、邪心を正当化するための妄信でもなく、純粋で…純粋であるからこそ冷たい旋律に彩られている。時に時代にあわないとも言われ、時に狂者とさえ言われかねない信念だ。

名前からの連想だろうか、あの有名な『モルダウ』の悲しく美しい旋律が浮かび上がった。けれど思い出したのではなく、聴こえてきたという方が正しい。
作曲:ベドリッチュ・スメタナ 交響詩『モルダウ』(連作交響詩「我が祖国」より第2曲)
19世紀後半、この曲を作ったスメタナは聴覚を失っていたという。幾つもの支流が集まりモルダウ川という呼ばれる流れを形成する情景が目に浮かぶ様な曲だ。そんな情景を聴覚を失った身で紡ぐ作業は、”祖国への愛”という信念に裏打ちされなければ到底成し得ないものだろう。

ある知人は、「あの有名な旋律が始まる前の、混沌を表しているような細切れのメロディーがなんともいえず美しい」と語った。『モルダウ』と聴いて思い出す、あの有名な旋律の前に、幾つもの支流がぶつかり、泡立ち、渦を巻く、そんな情景を目の前に映し出す細やかな動きをする部分があり、それを指して語ったのだ。争いの様にも聞こえ、焦りの様にも、そして昇華していくようにも聞こえる不思議な旋律だ。その後にあの有名な旋律が、全てを押し流していくように蕩々と鳴る。『無常』を高らかに歌っているようだ。焦燥や恐れや葛藤を飲み込み、悠然として風を受ける馬上の武将が、『信念』を携えて『無常』を見つめているのかもしれない。

この石を手にすると、ある夜の不思議な体験を思い出す。
詳細は省くが、その夜は「不条理な出来事」に憤慨し、ひとり鏡の前で戦士と化していた。沸々とわき出す怒りが涙を呼び、あふれ出る涙は止まらなかったが、それでも鏡を凝視し、私は不条理という敵と闘っていた。私は運命と闘っていたのではく、私自身と闘っていたのだと思う。少なくとも今ではそう思う。そしてそれは夢だったのかもしれないとも思う。
鏡を凝視する目は涙を留めたままだが、それでもなお鏡を仮想敵にして凝視し続けていた。すると次第に私の像はゆがみ、一人の戦士が現れた。その姿は敗走兵の様だった。見た事もない不思議な甲冑を身につけてはいたが、明らかに敗走兵とわかる姿だった。そして、その顔は次から次へとめまぐるしく変化していくのだった。西洋人の顔もあり、東洋人の顔もあり…。
その時間はどのくらいだったのだろうか。しばらく続いたように覚えているが、一瞬の出来事だったのかもしれない。
不確かな出来事の連続だったが、一つだけ確かだったのは、次から次へと浮かび上がった姿その全てを受け入れようとした、私自身の思いだ。恐怖を抱かせる体験だったが、その時の私には”OK”と言えた。

モルダバイトは巨大な隕石が地球に衝突した際に、地球の物質が飛び散り、それが急速に冷やされてガラス状になったものだという。旧チェコスロバキアのモルダウ川付近で最初に発見されてからしばらくは、隕石そのものだと考えられていたようだ。
純粋であるからこそ冷たい旋律に彩られる信念は、永遠とも思える時間を旅して飛来した隕石の確固たる意志に通ずるのかもしれない。隕石と地球との出逢いは、破壊をもたらしたのかもしれないが、同時に新しい融合をもたらした筈だ。幾つもの支流が寄り集まりやがて大河となるように、それぞれの信念が融合する大河に出逢う道がきっとある筈だ。

純粋であるからこそ冷たい旋律…
モルダバイトはそれを再認識させてくれる。

モルダバイトブレスレット

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